てらがよい日記

お寺という名の異世界に通って感じたこと

2024年の抱負は「謙虚」

おけましておめでとうございます。 股関節を痛めてしまった2023年の後半は、座禅ができないもどかしさを抱えた一方で、『ビジネスシーンを生き抜くための仏教思考』という良書に出会う幸運に恵まれて、この本を契機として仏教の概念が自分の中で徐々に整…

メリークリスマス&ペイフォワード

今週は寺町の料理店に、およそ1年ぶりに行きました。入店するとすぐに、7、8席がぎゅうぎゅう並ぶ小さな店のカウンターから、さらに小さな店の主が「お久しぶりです」と笑いました。ご無沙汰してます、忘れられないように来ましたと私が言うと、「ええ?…

わたあめのような仏教

9月最後の週。新型コロナのせいで、ずっと止まったままになっていた、座禅を自由にしてよい境内の一角が、いつの間にか再開していました。3年ぶりくらいでしょうか。 10月も間近というのに、夕方になっても気温は下がらず、28度。額からふきでる汗に煩…

人生舞台の役者たち

寺までの細い道を歩いていると、灰色の視界の向こうから、くぐもったスピーカーの「大雨洪水警報」を告げる声が流れてきました。6月上旬、季節外れの大雨が関東を襲って、朝から先も見えないほどの土砂降り。朝10時までカフェでコーヒーを飲みながら、い…

『Do not stand at my grave and weep』

「クロが眠るお寺に行こう」。ちょっとした旅行気分で妻に声をかけたのは、5月の終わりのことでした。 11年ほど一緒に暮らしたウサギのクロが昨年の6月5日に亡くなって、もうすぐ1年が経ちます。クロのなきがらは業者の手を経て、千葉県の木更津にある…

望まぬ花が咲いたなら

久しぶりにコップを購入しました。冬の終わりに咲く、ミモザの絵柄の丸いグラスです。いくつかある花言葉の1つには「感謝」があるそうです。メッセージ性のあるグラスです。さて、年始からバタバタして、寺には行ったり、行かなかったり。忘れたらいけない…

一瞬一瞬に決着をつける

今年最初の座禅会への参加で、若そうなお坊さんが、会の合間にこんな話をしました。 年末年始は特別な時期で、多くの人が1年を振り返る。とはいえ、年の終わりに1年を振り返る人はいても、毎日毎日を振り返る人はそう多くはないだろう。先日、自分が和歌山…

報われなさの1年を終えて

年始のブログ記事を振り返ると、2022年の抱負は「言葉を超えて『空』を考える」でした。けれども振り返ってみれば、よくもわるくも心がかき乱され、もがき、苦しみ続けた一年だったように思います。 10年ともに暮らしたウサギのクロが初夏に他界したこ…

ゴディバ・ジャパンの社長の禅と弓修行

最高の瞑想 (プレジデント2022年 9/16号) [雑誌] 作者:PRESIDENT 編集部 プレジデント社 Amazon ビジネス雑誌「ダイヤモンド」の9月16日号の特集、「最高の瞑想」は、雑誌としてはおどろくほど情報が充実していました。なかでも、禅の広まった過程を紹介…

修験の山

朝、起きると、前日の大雨はやみ、青空から陽の光がさしていました。宿泊した美術館のようなホテルで、朝ごはんをとり、温泉の露天風呂につかり、書籍に囲まれた図書室で前日読み逃した社会学の本を読んで、それから、山に向かうことにしました。山岳信仰、…

人生の自由

東京が栄えていることをしめす、ひとつの証拠のようなものが、夜の羽田から飛び立つ飛行機から見える、宝石箱のようにきらびやかな夜景にあるように思います。羽田発、山形行きの最終便に乗ったのは20時過ぎ。わずか一時間という空路にしてはあまりにも短…

ムダな悩み

境内を流れる狭い水路のそばの苔の生えた小さな岩の群れの上に、収穫を迎えた梅の実がコトリと落ちていました。まだ7月だというにはあまりにも暑い、猛暑続きだったこの夏の始まりに、久しぶりに朝の座禅会に参加したのは、ちょうど今から1月ほど前のこと…

ラジオの時間

台本通りに行くことは、まずないですよ。ラジオは番組が始まると、構成作家さんの事前の警句通り、台本なんて始めからなかったみたいに進みました。直前まで自宅で考えていた回答予習の中身は、私の中からすぐに消えて、20分という生放送の8割以上を、ア…

さよなら、愛しのうさぎさん

朝、目覚まし時計が鳴るよりも早く、ふと目が覚めて、もう少し寝ようかと思ったけど、すぐにうさぎのクロのことが頭をよぎりました。クロ、体調悪いんだ。起きて、様子を見なきゃ。リビングのケージを覗き込むと、うさぎはじっとしてました。少し前に突き出…

クロの世界と、私たちの世界

人間で言えば80歳くらいの老体にしては毛並みも良くて丈夫だったクロが、突然、食べることもできなくなったのは、4月30日の、いつもよりかなり冷え込んだ朝のことでした。あ、これは体調がかなり悪いんだ、と私が不安を覚えたのも束の間、数日の間にク…

「すべては空」という考え方のゆるさ「『金剛般若経』全講義」

『金剛般若経』全講義 作者:守也, 岡野 大法輪閣 Amazon 年末年始にかけて「『金剛般若経』全講義」という書籍を読みました。非常に面白かったです。これほど読んで良かったと思えた仏教書は、藤田一照さんの「現代坐禅講義」以来です。 本書は金剛般若経の…

遠州先染織物 遠赤外線冬用作務衣は驚きの軽さだった

この冬は新しい作務衣をおろしました。ふるさと納税で購入した「遠赤外線キルト作務衣 榛地織物」です。ネットでは2万3100円で販売されています。 遠赤キルト作務衣 | 小学館の総合通販サイトPAL-SHOP 私は今まで、5000円くらいのフリース素材の作…

2022年の抱負 言葉を超えて「空」を考える

262文字の、たいそう短い「般若心経」というお経を、生活の中で口ずさむことが増えたのは、2021年の途中からだったように思います。夜がふけるころ、会社から帰宅して、静かなリビングで、一人でそっと般若心経を唱えると、不思議と心が落ち着くこと…

大泣きしたクリスマスの思い出

早く寝ないとサンタさんがプレゼントを持ってこないよ。まだ私が幼かった頃、父か母かのどちらかが、そんなことを言って、クリスマスイブの夜になかなか寝ようとしない私をたしなめたことがあります。両親は、きっと、さっさと息子を寝かせて、枕元にプレゼ…

意味はわからないのに読む『金剛経』

12月、お寺で催される禅の勉強会に参加しました。仏僧たちがひごろ自分が研究している内容を発表するという、何年も前から寺で定期的に開催されている、誰でも聴講できる勉強会です。 この日は若い僧が『金剛経』について発表をしました。金剛経はその正し…

ある料理店の食器たち

私の行く寺町には、食器屋がたくさんあります。長崎の波佐見焼、金沢の九谷焼、岡山の備前焼といった、全国各地の有名な焼き物から、私はあまり知らない、でもその界隈ではおそらく名の知られているのであろう個人作家の、ちょっと変わった形や、今風のイラ…

座禅用の布団にはどんな種類が?初心者の座禅布団の選び方について

長引くテレワーク。気分転換不足。そこで、家で座禅を始めたい。けど、何を用意すればいいのかわからない。そんな人がいるかもしれません。簡単です。ネットかリアル店舗で座禅布団をゲットすれば、それがスタートの合図です。5000円くらいで高品質のも…

早朝のカフェ

先週は早朝からすごく寒くて、座禅を終えて寺を出てから、通勤時間前の静かな通りを、肩をすくめながら寒さから逃げるように駆け足で歩くような日で、結局、夜になっても気温は上がらないままで、自宅で冬用作務衣を押し入れから取り出しました。 夏の頃は、…

東京国立博物館『最澄と天台宗のすべて』に行って来ました

東京国立博物館で開催中の『最澄と天台宗のすべて』に、朝から行って来ました。コロナ禍ですので、入館は事前予約制。おしゃべり禁止。2100円。 tsumugu.yomiuri.co.jp 平日ということもあってか、おじいさんおばあさんが多い会場の中で、若い人の姿もち…

葬儀屋と夏の思い出

9年前、市中病院のベッドの上で、たくさんのチューブにつながれた父が静かに息を引き取ったとき、不思議とそれが、昼だったのか、夜だったのか、覚えていません。ただ、そこからは全てが慌ただしく、私は悲しみに暮れる母の代わりに親族に頭を下げたり、右…

去っていく妹に座禅を教える

私とはかなり年の離れた妹が、夫の仕事の都合で日本を離れ、ヨーロッパに行くことになりました。数年は帰国しないそうです。まだ2歳にも満たない子供を抱えた彼女の行く先は、イギリスやフランスといった大国ではなく、日本ではほとんど耳にしないような、…

初めての本を出版する朝に

6月17日のその日は、私がドラッグストアや薬局で処方箋なしで売られている薬、いわゆる市販薬というものについて書いた初の単著の発売日いうことで、自分でも気づかないうちに、やや緊張していたのかもしれません。床についたのが深夜12時、それから深…

うさぎの時間、人間の時間

飼っているうさぎのクロが、目頭の白い部分が片目だけ膨れているように見えて、心配になり動物病院へ連れて行きました。初老の獣医の見立てでは目に特に異常はないそうで、目やにを取るための目薬をその場でさして、目のマッサージをしてもらいました。手慣…

朝の座禅、老師の本

早朝、4時台、まだ夜の街灯の薄い明かりで街が霞みがかったようなオレンジ色をしているうちに布団から起き上がり、リュックを背負って寺に行き、お堂で座禅をするということを、この数ヶ月のあいだ何度か繰り返していて、座禅が終わったあとは、一駅分を南…

なぜ僧侶は「ひき逃げ」したのか

「車のひき逃げがあって、犯人を逮捕したら、お寺の住職さんだったんですって」 早朝の座禅を終えて、寺町にある馴染みの飯屋で朝食をとっていると、カウンター越しの店主が私にそんなことをいってきました。 「え!ここら辺ですか?」 「ううん。ネットのニ…