てらがよい日記

お寺という名の異世界に通って感じたこと

映画『禅ZEN』~大海のなかで水を見ない~

禅 ZEN

禅 ZEN

 

禅 ZEN』という映画を観ました。鎌倉時代曹洞宗を開いた道元という禅僧の物語です。2008年製作。主演は中村勘九郎さん。わたしこの俳優さん好きなんです。

映画ですから史実とはかけ離れたところもあるようですが、全体としてはハラハラしながらおもしろく観ることができました。中村さんの所作の美しいこと。さすが歌舞伎役者。体を売り生計を立てる内田有紀さんの体当たりの演技も光っていました。

さて、物語は、中国に渡り、禅を学び、帰国後に布教するも、当時の仏教界との軋轢で、土地を転々とし・・・という道元の苦難苦渋の道のりからスタート。民衆の支持を得て人気が出てくると、武装した比叡山の僧たちが道元の寺におしかけ脅したり焼打ちしたり、もう散々。焼打ちの事実は確認できませんでしたが、比叡山から迫害されていたのは史実のようです。比叡山こわい。

で、逃げるように日本海へ向かい、福井県でかの有名な永平寺を開きます。名を上げた道元の元に、こんどは鎌倉幕府から思いがけない報が。「鎌倉に行ってくれ」。鎌倉幕府北条時頼に呼ばれ下向することになります。

道元は時頼と初めて相対し、そこで禅の問答が繰り広げられます。これがこの作品のクライマックス。権力闘争で心を病み、錯乱する時頼に云った道元のセリフが、私はこの作品で一番印象に残りました。

「大海のなかで水を見ないようなもの」

水の中にいるのに自分で目隠しをして水を見ようとしない。自分の胸に手を当ててみると、そういうことありませんか?わたしはあります。答えはそこにあるのに、それを見ようとしない、見えない。いけませんね。

史実の発言かどうかは知りませんが含蓄のある素敵な言葉です。

大海の中で水を見るという、当たり前のことを当たり前にすることのむずかしさよ。そこが禅が与えてくれる気づきでもあります。

劇中ではこんな言葉も出てきました。

『春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて すずしかりけり』

この意味は、

「春は花が咲いて、夏はホトトギスが鳴いて、秋は月がきれいで、冬は雪があざやかで、ああいいなー」

ということのようです。ありのままを受け入れましょう、という教えの歌として登場しました。これは道元が詠んだ歌として歴史に記録されています。

鑑賞後、道元を見習って自分ももうちょっとガンバローと思える佳作です(なんて軽い発言・・・)。ご興味ある方は、ツタヤへゴー(もちろん『旧作』)!!