てらがよい日記

お寺という名の異世界に通って感じたこと

座禅用の布団にはどんな種類が?初心者の座禅布団の選び方について

長引くテレワーク。気分転換不足。そこで、家で座禅を始めたい。けど、何を用意すればいいのかわからない。そんな人がいるかもしれません。簡単です。ネットかリアル店舗で座禅布団をゲットすれば、それがスタートの合図です。5000円くらいで高品質のものが買えます。そして、座禅布団(蒲団)と、スペースさえあれば、いつでも誰でも座禅はできます。

問題は、どの座禅布団を買えばいいのかということです。いや、嘘をつきました。「問題は」と書きましたが、実際は、ほぼ一択です。簡単です。結論から言えば、ネットで滝田商店の「座布(ざふ)」という座禅布団を購入すれば、まず問題はないでしょう。滝田商店は浅草にある大正2年創業の有名老舗仏具店です。

もっとも、素材やサイズの違いはありますから、少しは道案内が必要かもしれません。そのついでと言ってはなんですが、今回のブログでは、少しだけ座禅布団の種類についても触れたいと思います。

座禅用の座布団は2種類

まず、座禅布団はお寺によって使っているものが異なります。世の中にどれだけの種類があるかは知りませんが、私が今まで使ったことがあるのは2つです。1つめは、丸くて厚みのある座禅布団で、これは座布(ざふ)と言い、一般的には禅宗のうち臨済宗で使われているとされます。もう1つは、通常の座布団より2〜4倍長い、あるいは3分の1ほど短い座布団で、これは単布団といい、禅宗曹洞宗で使われます。でも、実際は私は臨済宗の寺で単布団で座禅をしたことがあるので、宗派によって必ず分かれているということでも、ひょっとしたらないのかもしれません。私、お寺の人じゃないのでそこはわかりません。

単布団のメリットとデメリット

座布も単布団も、どちらもネットで簡単に買えます。けれども、初心者に圧倒的にオススメしたいのは「座布」の方です。理由は、初心者が座った時に姿勢のバランスを取りやすい上に、収納や持ち運びも簡単だから。あまりかさばると、家族から怒られちゃうでしょ?

実は、座禅では必ず、腰の部分を高くして座ります。ご存知でしたか?腰を高くするだけで、長時間座っていられるようになります。全てのお坊さんたちは、実は腰を高くして座禅しているのです!最初これを知った時は、「ずるい!」と思いました。いや、ずるくはないんですけど。単布団を使う場合は、長い布団を折り曲げて、段差を作るか、もしくは通常の座布団の上に、極端に短い(小さい)単布団を乗せて段差を作ることで、その上に腰を置きます。つまり、単布団で座禅をしようとすると、長い布団が必要だったり、複数の座布団が必要だったりするのです。

単布団のもう一つのデメリットは、腰を据える段差を作りにくいという点です。座布団を積み重ねることで段差を作る単布団では、それなりの枚数を重ねる必要があります。2〜3枚の座布団を重ねてみたところで、段差はせいぜい10センチ程度でしょう。

座禅の初心者であれば、段差はあった方が楽に座れます。座禅は「楽」をするものではないとう批判もあるでしょうが、それは置いとくとして、とにかく、段差はあった方がバランスが取りやすく、体も痛くなりにくいのです。その点、丸くて厚みのある座布であれば10センチ以上の段差ができますので、座った時には圧倒的にバランスが取りやすいと感じます。座布に慣れてしまうと、単布団での座禅が辛くなるほどです。

では、単布団のメリットは何かというと、個人的な感想にはなりますが、座禅をした時に膝が接着する面が柔らかいという点かもしれません。例えば下がコンクリートの場合、単布団はコンクリートの上に座布団を敷いて、その上で座禅をします。しかし、座布の場合は、コンクリートの上に置いて腰をかけるので、膝はコンクリートに直接つくことになります。

もう一つ、私は最初はお寺で単布団から座禅を始めた身なので、未だに単布団の方がよく集中できるような気がします。まあ、これは気のせいかもしれません。

話をまとめると、軽〜い気持ちで自宅で座禅を始めたい人は、座布を購入することをお勧めしたいと思います。

使用感が異なる表面の材質

もう少し話を続けます。座布を買うと決まって、次に決めるのは材質です。先述の滝田商店のサイトには2種類の座布が用意されています。表面の材質が綿のものと、ビロードのものです。2つの違いは、綿素材はツルツルするのでお尻が滑り、ビロードは摩擦があるので滑りません。腰が安定するのは断然、ビロードです。ビロードのデメリットは、値段が綿素材よりも数千円も高いこと、それから、ホコリなどの汚れがつきやすいことです。

私は両方とも購入した経験がありますので、個人的な感想をお話ししたいと思います。

今年の8月、自宅の座禅用のクッションを新調しました。今まで使っていたのは、2016年11月に購入した滝田商店の座布でした。夜中にベランダで座禅を終えた後で、そのままうっかり置き忘れたことで、翌朝の大雨で、ぐしょぐしょに濡れて使い物にならなくなってしまいました。やってしまいました。

厚みのある座禅布団の中はパンヤ綿という材質で、濡れてしまうとたぶん乾かしても中心部が元には戻らなさそうな作りになっているので、諦めて新しいのを購入することにしました。2016年に購入したのは直径33センチでサイズはやや大きめ、表面の材質は一般的な綿布で、値段は5000円ほどでした。それに対して、今回購入したのは中サイズの直径30センチ型の座禅布団で、表面はビロード材質、8500円ほどのものです。ビロードは滑りにくく、とても座りやすくて驚きました。ただ、私はもともと、綿素材で始めましたので、3000円の差額を払うほどの利便性は感じることができず、次回は綿でもいいかなと思っています。中背の男性の私は33センチよりも30センチがあっているような気がします。なので、次回購入する時は、綿素材の30センチ型を選ぶと思います。

説明は以上となります。座禅布団を買う時の、参考になりましたら幸いです。滝田商店の座禅布団はアマゾンでも購入できます↓

早朝のカフェ

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先週は早朝からすごく寒くて、座禅を終えて寺を出てから、通勤時間前の静かな通りを、肩をすくめながら寒さから逃げるように駆け足で歩くような日で、結局、夜になっても気温は上がらないままで、自宅で冬用作務衣を押し入れから取り出しました。

夏の頃は、いっときは毎週のように励んでいた早朝の寺座禅も、実は1ヶ月ぶりで、寺の朝の空気を吸うと、ああ、またここに戻ってきたな、という懐かしさを覚えます。過去の日記を調べたら、この朝の座禅を始めたのは4年前でした。

最近は、座禅を終えた後はいつも決まったお店で朝食を済ませているのですが、朝の座禅を始めたころは、別のカフェをよく利用していました。

そのお店は、参道から二つほど路地を入った、小さな個人経営のカフェでした。レンガとコンクリートが打ち付けられた、3階建の建物の通りに面した1階にあるお店で、ウッドデッキの入り口に、緑が茂って、朝の陽光でいつもキラキラと輝いていました。10人どうにか入れるくらいの狭い店内は、ドライフラワーや絵が飾られた白塗りの壁に、茶色い木目の家具で統一された、いかにも女性受けしそうな今時のカフェという感じなのに、いつも入り口には新聞が数紙置いてあって、私は厚切りのパンとスクランブルエッグとサラダとコーヒーのセットを注文したあとで、その新聞をまるで我が家のようにくつろぎながら読んだり、パソコンを開いて文章を打ったりしていました。

店はたしか、朝の7時から開いていました。カフェを営んでいたのは、20代後半から30代前半くらいの、容姿のいい、接客業にしては声のトーンが低い、一人の女性でした。住宅だらけの場所に、こんな早朝から、女性が一人で、こんな瀟洒なカフェを、どうして営んでいるのか。常々気になっていた私が、ある時、まだ開店直後で、私以外の客がいない店内で、私が注文したスクランブルエッグを作っている彼女に話しかけると、ビルのオーナーが始めて、夜はお酒を出している、というような答えが返ってきたように記憶しています。そこで、この店は女性のものではないことを知りました。

一度だけ、冷たい雨の降る日に、座禅を終えて店に向かうと、なぜか閉まっていたことがありました。どうしたんだろう。今日は休店日ではないのに。ウッドデッキから覗く暗い店内に、人の気配はありませんでした。その時、背後で、いつもの女性が駆け足でやってきて、すいませんすいません、と言いながら、店のドアを開けました。電車が遅れてしまって、と言いながら。私はしばらくあっけにとられて、その様子を眺めていましたが、女性が遅刻したことも、女性が他の駅からわざわざ店に通っていたことも、私にはなんだかちょっと意外で、面白いことのように思えて、ぜんぜん不快な気持ちにはなりませんでした。

このカフェはもう、ありません。店がたたまれたのは、たしか、コロナウイルスが流行した後だったと思います。座禅を終えた日、ふと思い出したように、店があった場所に行くと、見慣れたウッドデッキの先にはカフェではなく雑貨屋が店を構えていました。ひょっとすると、あの女性が店主なのかもしれない。そんな淡い期待を抱いて店内に入ると、「いらっしゃいませ」と言ったのは、見知らぬ女性でした。