てらがよい日記

お寺という名の異世界に通って感じたこと

ムダな悩み

境内を流れる狭い水路のそばの苔の生えた小さな岩の群れの上に、収穫を迎えた梅の実がコトリと落ちていました。まだ7月だというにはあまりにも暑い、猛暑続きだったこの夏の始まりに、久しぶりに朝の座禅会に参加したのは、ちょうど今から1月ほど前のことで、今振り返っても本当に厳しい暑さでした。朝5時前でも、空はもう十分に明るくて、家を出るとすぐに体が汗ばみ出しました。熱暑のせいで参加者のまばらな座禅会は、熱を含みまったりとした重い空気に包まれながら始まり、いまいち集中できないまま坐禅を組む私のもとには、この日、すぐに一つの後悔が襲ってきました。

一匹の蚊が、私の周囲を飛び始めたのです。

虫除けスプレーをしてくるんだった。印を結んでいる私の左手の上をつかず離れず飛び回っていた蚊は、次第に首筋の方に向かい、耳元で不快で不吉な音を立てながら、ずっとウロウロとしていました。そのうち、産毛が反応する微かな感触にいたたまれなくなって、そっと目を向けると、蚊は私の手に止まっていました。じわじわと、かゆみが襲ってきました。結局、私は蚊の上陸もなんども許して、その度に座禅の集中は途切れ、不本意な気持ちで寺を後にしました。

しばらくして、きっとあちこち刺されているだろうと不安だった虫刺されは、実は一つもありませんでした。なあんだ。オスの蚊だったのかも。私は刺される心配のない蚊に、気を揉み、時間を無駄に費やしていたのでした。

過去は考えない。未来も考えない。今、この時だけに己を置く。坐禅の基本を思い出しました。