てらがよい日記

お寺という名の異世界に通って感じたこと

座禅日記

メリークリスマス&ペイフォワード

今週は寺町の料理店に、およそ1年ぶりに行きました。入店するとすぐに、7、8席がぎゅうぎゅう並ぶ小さな店のカウンターから、さらに小さな店の主が「お久しぶりです」と笑いました。ご無沙汰してます、忘れられないように来ましたと私が言うと、「ええ?…

人生舞台の役者たち

寺までの細い道を歩いていると、灰色の視界の向こうから、くぐもったスピーカーの「大雨洪水警報」を告げる声が流れてきました。6月上旬、季節外れの大雨が関東を襲って、朝から先も見えないほどの土砂降り。朝10時までカフェでコーヒーを飲みながら、い…

『Do not stand at my grave and weep』

「クロが眠るお寺に行こう」。ちょっとした旅行気分で妻に声をかけたのは、5月の終わりのことでした。 11年ほど一緒に暮らしたウサギのクロが昨年の6月5日に亡くなって、もうすぐ1年が経ちます。クロのなきがらは業者の手を経て、千葉県の木更津にある…

一瞬一瞬に決着をつける

今年最初の座禅会への参加で、若そうなお坊さんが、会の合間にこんな話をしました。 年末年始は特別な時期で、多くの人が1年を振り返る。とはいえ、年の終わりに1年を振り返る人はいても、毎日毎日を振り返る人はそう多くはないだろう。先日、自分が和歌山…

報われなさの1年を終えて

年始のブログ記事を振り返ると、2022年の抱負は「言葉を超えて『空』を考える」でした。けれども振り返ってみれば、よくもわるくも心がかき乱され、もがき、苦しみ続けた一年だったように思います。 10年ともに暮らしたウサギのクロが初夏に他界したこ…

ムダな悩み

境内を流れる狭い水路のそばの苔の生えた小さな岩の群れの上に、収穫を迎えた梅の実がコトリと落ちていました。まだ7月だというにはあまりにも暑い、猛暑続きだったこの夏の始まりに、久しぶりに朝の座禅会に参加したのは、ちょうど今から1月ほど前のこと…

ラジオの時間

台本通りに行くことは、まずないですよ。ラジオは番組が始まると、構成作家さんの事前の警句通り、台本なんて始めからなかったみたいに進みました。直前まで自宅で考えていた回答予習の中身は、私の中からすぐに消えて、20分という生放送の8割以上を、ア…

2022年の抱負 言葉を超えて「空」を考える

262文字の、たいそう短い「般若心経」というお経を、生活の中で口ずさむことが増えたのは、2021年の途中からだったように思います。夜がふけるころ、会社から帰宅して、静かなリビングで、一人でそっと般若心経を唱えると、不思議と心が落ち着くこと…

ある料理店の食器たち

私の行く寺町には、食器屋がたくさんあります。長崎の波佐見焼、金沢の九谷焼、岡山の備前焼といった、全国各地の有名な焼き物から、私はあまり知らない、でもその界隈ではおそらく名の知られているのであろう個人作家の、ちょっと変わった形や、今風のイラ…

早朝のカフェ

先週は早朝からすごく寒くて、座禅を終えて寺を出てから、通勤時間前の静かな通りを、肩をすくめながら寒さから逃げるように駆け足で歩くような日で、結局、夜になっても気温は上がらないままで、自宅で冬用作務衣を押し入れから取り出しました。 夏の頃は、…

東京国立博物館『最澄と天台宗のすべて』に行って来ました

東京国立博物館で開催中の『最澄と天台宗のすべて』に、朝から行って来ました。コロナ禍ですので、入館は事前予約制。おしゃべり禁止。2100円。 tsumugu.yomiuri.co.jp 平日ということもあってか、おじいさんおばあさんが多い会場の中で、若い人の姿もち…

去っていく妹に座禅を教える

私とはかなり年の離れた妹が、夫の仕事の都合で日本を離れ、ヨーロッパに行くことになりました。数年は帰国しないそうです。まだ2歳にも満たない子供を抱えた彼女の行く先は、イギリスやフランスといった大国ではなく、日本ではほとんど耳にしないような、…

初めての本を出版する朝に

6月17日のその日は、私がドラッグストアや薬局で処方箋なしで売られている薬、いわゆる市販薬というものについて書いた初の単著の発売日いうことで、自分でも気づかないうちに、やや緊張していたのかもしれません。床についたのが深夜12時、それから深…

なぜ僧侶は「ひき逃げ」したのか

「車のひき逃げがあって、犯人を逮捕したら、お寺の住職さんだったんですって」 早朝の座禅を終えて、寺町にある馴染みの飯屋で朝食をとっていると、カウンター越しの店主が私にそんなことをいってきました。 「え!ここら辺ですか?」 「ううん。ネットのニ…

人間は他人に感謝することができない

先日妻から聞いた話です。妻が南インドで教わったことには、人間というのは、本当の意味で他人に感謝ができないそうです。だから、神様に祈ったりするときは、「自分が他人に感謝できますように」と念じるのが良いそうです。 私は寺・神社で手を合わせるのが…

借り物の生き物について

ついに体に変調をきたしました。ふふふ。朝起きたらカマキリに。なんてことよ。カフカかよ。 詳細はいずれも書けないのですが、年始から着手していた重めの取り組みが2つ、ようやく一段落つきました。この2つが重なったことは心身に想像以上に負荷だったよ…

自分を分解して、散り散りにして、大気中に投げ捨てる

相変わらず座禅会は無期延期ではありますが、寺にはちょこちょこ行ってます。今日は縁側で勝手に座って瞑想しました。10〜20分くらいだったと思います。 最近非常に忙しく、今日も本当なら家でやるべきことが山ほどあったのですけど、寺には定期的に足を…

寺でデスクワーク「寺マック」体験の収穫

テレワーク需要で、寺をワーキングスペースとして提供する試みが出始めています。 例えばシェアウィングという会社は、新たなライフスタイルとして『お寺ワーク』を提案し、6月22日から予約サイトでの受付を開始しました。 あなたの仕事場にお寺という選…

誰もいない寺でゴロゴロ〜っとする

2ヶ月ぶりに寺に行きました。ようやく閉門が解除されたのです。 ところが、さー坐禅するぞ!と思ったら、単布団がありません。コロナウイルスの影響で、単布団が撤去されてました。 な・・・なんと。単布団があっても、どうせ坐禅する人なんてほとんどいな…

散る桜、残る桜も、散る桜

寺の廊下を歩いてると、白い小さな蝶が庭をヒラヒラ。 んー?めずしいなあ・・・と思って目を凝らしたら、 風に舞う桜の花びらでした。ああ、春ですね。 今日はお寺で朝から一人坐禅。 コロナウイルスの影響で不要不急の外出は控える時期なので、 寄り道・回…

「あなたはビジネスがやりたいんだな」と言われて

むかし他人に言われた言葉が、その時は十分に理解しなかったのに、 ふとした瞬間に記憶の海から浮き上がり、しかもその意味が胸に突き刺さる・・・。 そんな経験はないでしょうか。 先日、部下の一人に、 「マネージャー、独立するって本当ですか?詳しく聞…

コロナウイルスで注目の手洗いは、最上の癒しである

コロナウイルスの影響で坐禅会が無期限で中止になりました。 あらゆる事柄がコロナウイルスの影響を受けていると言っても過言ではない状況です。 今週はトイレットペーパーの品薄情報が世間を駆け巡りました。 最初は嘘だったのに、一斉に購入されたことで本…

お寺の価値は装飾ではなく場にある

久しぶりに暖かかったのでお寺で坐ってきました。 坐ってスッキリ、さあ帰ろうとしたら、 境内に観光客の女性たちが数人。 そのうちの一人が、 「まあまあだね。すっごく感動した、というものではないな」 といい、もう一人が、 「そうでしょう」 と頷いてい…

これじゃない寺感

今日はいつもとは違う駅で降りて別の寺に行ってきました。 とても有名なお寺です。 着いたら桜が咲いててびっくりです。こんなにひやいのに。 甘酒を飲んだりして、1時間くらい過ごしました。 でも、どうもしっくりきませんでした。 以前も来たことがある寺…

渋谷ハンズでロボットお坊さん「ロボウさん」と話してきた

ロボットのお坊さん、「ロボウさん」が渋谷にいると聞きつけ、行ってきました、渋谷の東急ハンズ。23日からお寺イベントが開催されています。 ロボウさんとは、各地の僧侶が念力(インターネット)を使い、ロボット僧侶の体を借りて人々と話すマシーンです…

大きな鉢、上から見るか、横から見るか

ことし最初の坐禅会への参加です。いやー、さむいのなんの。 今日の坐禅は、まったくダメでした。気付いたら、ほとんど仕事のこと考えていました。 今年の目標は、前回のブログで書いたとおり「円(まどか)なること太虚(たいきょ)のごとく、欠くること無…

2020年、欠くることなく、余ることなし

2019年の末、薬学の勉強の合間を縫って、坐禅の本をめくっていると、こんな素敵な言葉を見つけました。 円(まどか)なること太虚(たいきょ)のごとく、 欠くること無く、余ること無し 「〇」とは大空(太虚)のように境目がない丸のことで、だれにとっ…

わたしの奇妙な『波紋法』

空があまりに青くてきれいなので、ちょっくらお寺で坐禅してきました。年配の観光客が続々来る中で、ひとり、じっと40分坐ってました。でも、なんだかとっても集中できて、最高に気持ちよかったですね。来週からは年末で忙しいので、寺で坐るのは今年はこ…

人生初の滝行体験。耐えられた時間はなんと・・・っ!!

滝行体験をしてきました。もちろん人生初です。 三重県伊勢市のほうに、滝に打たせてくれる場所があるのです。奥さんが「行ってみたら?おもしろいんじゃない?」と教えてくれたので、二人で行ってきました。 参加費は1人2200円。所要時間は説明・着替…

すり鉢の底からリネン服革命家が教えてくれたこと

今回は服のお話をしたいと思います。 「よく人は、甲府を『擂鉢の底』と評しているが、当たっていない。甲府は、もっとハイカラである」 そういったのは作家・太宰治だったそうです。擂鉢(すりばち)の底とは、山々に囲われた甲府盆地のこと。わたしは数え…